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|   「本ができるまでの物語」 |
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第1話
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「小説を書こうとはまったく思っていなかった」
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■ 逆説的な思いから生まれる力
正直、2、3年ほど前までは自分の人生の中で小説を書くという行為は私にとって最も縁遠いもの
だった。それがなぜ今こうして小説を書いているのかと考えると私自身も不思議に思う。た
だ、おもしろいことに気付いた。それは私の今の心持は2、3年前とまったく変化していないので
ある。ということは、「自分は小説とは無縁だ」という気持ちが、実は私に小説を書かせた
張本人だということである。
小説を書こうなどと思っていなかったから小説を書くことになったというのはあまりに心理
としては矛盾している。しかし、皆さんにもこうした経験があるはずだ。こんなやつとは絶
対に付き合えないと思っていた友達となぜか1番の親友になっていたなどということがない
だろうか。それは自分の中の評価の基準が変わったから起きた現象ではない。
むしろ、それは自分の中にこんなやつとは絶対に友達にはなれないという思いが、その友達
を自分の中で1番の親友にしたのである。評価の基準は今までと同じでありながら、それでも
その友達と親しくなる、人間にはこうした不思議な感情があるのだ。
偉大な人物にしてもそうだろう。本田宗一郎、彼も世界のホンダと言われているあの大企業
を初めから目指していた訳ではない。そんなこと頭の片隅にもなかったはずだ。それどころ
か始めから大企業にしようという概念が頭の中にあったなら、今のホンダは存在していなか
ったに違いない。どちらかといえば、本田宗一郎は、大企業にする気などさらさらなかった
ように思う。だから、ホンダは大企業になったのだ。
音楽の世界でもそうだろう。浜崎あゆみも夢に見ていたとはいえ、現実に何百万枚も自分が
セールスする歌手に自分がなるとは想像していなかったのではないだろうか。まして今でも
その感情が変わっていないからこそ彼女の歌は人々の心に伝わるのであって、彼女の心にた
くさん売ってやろうという感情が芽生えた時、彼女の歌は魂を失うと思う。
人間には強く思いを念じることによって願いをかなえるという力とは別にこうした不思議な
力もある。いや、もしかしたら、逆説的な思いから生まれる力は強く念じる気持ちが別の形
になって表れた姿かもしれない。そう、この逆説的な力が私に小説を書かせたのであり、そ
の力はつまり、揺るぎ無い信念と己のやりたいことをすることから産み出された力なのである。
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